アミューズミュージアム/ワークウェアを超えたアート-布への想いが美を作りだす
ぐるっとパスを購入したので、
浅草のアミューズミュージアムへ行ってきました。
今回で2回目、前回の記事はこちら。
アミューズミュージアムは
大手芸能プロダクション「株式会社アミューズ」の運営する私立美術館。
キュレーションのコンセプトは「もったいない」。
展示されているのは民俗学者田中忠三郎の所有する東北の民具。
芸能プロダクションがなんで民具?と思ったら、
「株式会社アミューズ」の創業者と田中忠三郎が同じ青森出身だからなんですね!
場所は浅草寺のすぐ近く。
土曜日の午後、晴れているので浅草寺には観光客もたくさん。
立地は浅草寺の二天門の真ん前。
人通りも多いです。
アミューズミュージアムは1階がミュージアムショップ。
和小物や浅草のおみやげを扱っているので
ミュージアムショップのみの利用のお客さんも多いです。
特別展は「ワークウェアを超えたアート-布への想いが美を作りだす」
会期がながーいので特別展ながら常設展っぽい。
\
なんと展示されているものの多くは実際に触れる!という面白いところです。
もちろん写真は取り放題。
展示品はNHK「美の壺」でも特集されたボロや刺し子、裂織、民具など。
入ってすぐあるのは麻で出来ている学生服。
こちらは自家製の麻布を街に持って行きミシンで仕立ててもらったもの、
と予想されていました。
青森では夏でも冬でも麻の服を着ていたそうです。
麻といえば通気性が売りの素材。
寒いはずの青森でなんで麻と思いますよね?
今では当たり前のように使われている木綿。
日本では長い間、外国から輸入する高級品でしたが、
江戸時代に栽培が拡大し一般的なものとなりました。
そんな木綿ですが、実は寒冷地は栽培に適さないんです。
現金収入の少ない東北の農民にとっては外部から入ってくる木綿は高級品でした。
そのため自家栽培できる麻が素材として使われていたんですね。
こちらは大正期の男性用作業シャツと股引き。
肌着なので藍染めもされず、シンプルなものです。
麻らしくシャリシャリとした手触りでした。
麻は通気性のいい素材、でも青森には厳しい冬がやってきます。
そんな寒さを凌ぐため農民は身近にある大小の麻布を重ねていきます。
服も肌着はもちろん、お布団もです。
こちらは「ドンジャ」と呼ばれるカイマキ状のお布団。
大小の麻布が重ねられた中に入っているのは綿ではなく麻屑。
重さは14kgもあるそうです、持ってみても固いし重い…体育のマットみたい。
しかも1人1枚ではなく、家族何人かでくるまっていたそうです。
様々な藍染めの布が重ねられているので藍の濃淡がありますね。
以前来たときよりボロボロ感が増しているような…
老婆が家族のために作っていた大小様々な足袋。
パッチワークのおもしろみがあります。
青森の農民にとって布はとっても大切なもの。
使い古し、これ以上使えなくなったボロ布も引き裂いて
布を糸代わりにして裂織(サキオリ)と呼ばれる織物にしました。
ものを最後まで使い切っていたんですね。
こちらは裂織で作られたカイマキ。
布を引き裂いた糸がグラデーションになっています。
ここまで記事を書いていて気づいたんですが、
以前着たときから常設展の展示品が少し入れ替えされていますね。
このやたらスタイルのいいマネキンはそのまま!
藍染めの麻布の股引きはジーンズっぽいですね。
藍で染めることで害虫よけになると信じられていたので
屋外作業の股引きは濃い目に染められていたそうです。
田中忠三郎の収蔵品は布だけでなく民具も。
鮭皮ブーツ。
縄文土器。
こちらは馬の背につける装飾用の「伊達鞍」
津軽地方の農民の間で明治末期から昭和初期にかけて流行したそうです。
おしゃれして街に出かけるときや馬の大会の時に着けたのだとか。
洋銀で出来ていたり、家紋や装飾で飾られ華やか。
何回見ても刺し子の美しさは感動もの。
直線的な美しい模様が特別な教育を受けていない女性たちによって
創りだされているんですものね、美的感覚が鋭い。
アイヌなどの北方民族やケルトは曲線も入った幾何学的模様ですが、
刺し子は直線のみ。
粗い麻の布目を木綿糸で埋めるという目的があるから、
より多くの布目を埋めるために隙間の多くなる曲線ではなく、
直線で作られるもようになっているんでしょうか?
織りではなくて刺繍で作られている模様ということが信じられません。
若い娘の農作業用股引き、若い娘のものは装飾が工夫されているものが多いです。
農作業用とはいっても皆のいる場所に仕事に行くので
今で言う通勤着のような感覚なので、おしゃれ心バリバリとなっております。
麻布に色とりどりの毛糸を刺した前掛け。
毛糸も針も貴重品で、1本の毛糸を裂いて使っているそうです。
こんなにきれいなものがつくれるなんてやっぱり美的感覚すごい。
刺繍や図案の上手さは女性のステータスになっていたんでしょう。
ここから特別展の展示場。
国指定有形民俗文化財 南部タッツケ。
娘用の作業用の股引きです。
作業用のズボンなので動きやすくゆとりがありますが、
害虫の侵入を防ぐため足首はタイトになっておりサルエルパンツのようです。
若い娘がおしゃれをしたいのは今も昔も一緒。
布は貴重でもおしゃれはしたい!
補強部分の組合せや刺し子に工夫が見られて1つ1つ違います、面白い!
これが寒村の農民の作業着というのだからすごい話です、おしん時代ですね。
約200年前の織り機もありました、販売されていて一式約36万円。
高いのか安いのかよくわからない値段設定です、安い気もするけど…
上から浅草寺を見ることもあんまりないので面白いですね。
アミューズミュージアム
〒111-0032 東京都台東区浅草2丁目34番3号
TEL:03-5806-1181
ホームページ:http://www.amusemuseum.com